トップ > 最新情報 > 【報告】 第67回精研シンポジウムが開催されました(2014年10月2日)
第67回精密工学研究所シンポジウム
IoE・ビッグデータ時代の第1次産業の知識産業化を目指して
-センサとネットワーク、情報活用の現状と課題-
2014年10月2日(木)、本学大岡山キャンパス蔵前会館において、異種機能集積研究センター(ICE Cube Center)と共催で「第67回精密工学研究所シンポジウム IoE・ビッグデータ時代の第1次産業の知識産業化を目指して-センサとネットワーク、情報活用の現状と課題-」を開催した。
近年、高度情報化社会はさらに進展し、情報ネットワーククラウドの末端にはセンサネットワークが配備され、あらゆる物・環境・生き物にまでセンサが入り込み、そこから多種多様な大量のセンサ情報が引き出され、社会・生活に変革がもたらされる、所謂ビッグデータ活用の時代となっている。その中で最近では、AI 農業、スマート農業等のキーワードで代表される、農業を中心とした第1次産業の情報化、知識産業化への取り組みも加速している。今後はさらに情報及び情報技術が積極的に利活用され、農業のみならず林業・水産業までも活性化することが期待されている。本シンポジウムはこのような第1次産業の情報化、知識産業化の大きな流れの中で、現場での「センサとネットワーク、情報活用の現状と課題」情報化の現状について、大学、企業の方々にご講演をいただき、最新情報及び今後の方向性について議論をおこなった。
前半の部では、益 一哉(精密工学研究所副所長)からの挨拶に続き、本多 潔先生(中部大学教授/アジア工科大学院客員教授)より、「センサネットワークと相互運用性が支える農林水産業の知識産業化」と題して招待講演をいただき、それに続いて“センサ技術を活用したソリューション事例”のセッションでは、平藤雅之先生(農研機構領域長/筑波大学教授)より「農林水産分野におけるセンシング技術及びデータの活用」、野原節雄氏((株)アイ・エム・ティー 専務取締役技術統括)より「海老養殖 閉鎖循環式陸上養殖システム -今後の陸上養殖の課題は-」についての講演をいただいた。
休憩を挟み後半の部では、神成淳司先生(慶應義塾大学環境情報学部准教授/医学部兼担准教授、内閣官房政府CIO補佐官(統括))より「農業情報創成・流通促進戦略~AI農業等を中核としたMade by Japan農業の推進~」の講演があり、続いて“センサ情報と上位ネットワークを結ぶ架け橋となる技術講演”セッションでは、深谷朋昭氏(富士通イノベーションビジネス本部Akisaiビジネス部シニアマネージャー)より「企業的農業経営を支える食農クラウド Akisai」、出口 弘先生(本学総合理工学研究科教授)より「IoE時代の自律分散協調制御の仕組みとしてのリアルワールドOS −PoEデータの収集・利活用の仕組み−)の講演があった。
シンポジウムには、コンピュータ、半導体、ナノエレクトロニクス関連をはじめとする幅広い分野の大学、企業、関連機関の研究者のみならず、経営戦略、企画、特許部門などから115名が参加した。
今後クラウドにはいたるところにエレクトロニクス・光技術が組み込まれ、またその末端にはセンサネットワークが張り巡らされ、最先端はいよいよ生態系へ入り込んでいくであろう。農業をはじめとする第一次産業はその入り口である。ここから産まれる多種多様大量な情報とその意味理解に基づくActionにより、社会・生活に変革がもたらされる。この情報化の力を得て第1次産業も高度かつスマートに変貌していくであろうことを強く感じることができた。
主催者のグループが専門とする半導体集積回路技術とその関連産業は変革期のまっただ中にある。微細化、高性能化だけでは生き残ることも、進化することもできない。単に設計して作るだけではなく、出口やアプリ、或いはソリューションを創り出すことを念頭に、精密工学研究所と異種機能集積研究センター(ICE Cube Center)が、“IoE・ビッグデータ時代の第1次産業の知識産業化を目指して”をテーマに、このシンポジウムを開催したことは非常に意義のあるものであった。
(文責: 極微デバイス部門教授 益 一哉)