トップ > 最新情報 > 精研談話会を開催しました。(11月5日)
精研談話会報告
日時:2010年11月5日 (金) 13:45-15:00
場所:すずかけ台キャンパスJ2棟16F 物質科学創造専攻会議室
講師:安田 弘行 (大阪大学大学院工学研究科マテリアル生産科学専攻)
講演題目:D03型Fe基化合物の特異な擬弾性挙動
講演内容:
「擬弾性」とは、材料が塑性変形するような大きな変形を加えても、除荷するだけで形状が回復する現象のことであり、携帯電話のアンテナやメガネのフレームに応用がなされています。一般に、巨大な擬弾性の発現にはマルテンサイト変態が不可欠であるとされています。しかしながら、講演者安田先生らは、それに代わり、D03型構造を有するFe3AlやFe3Gaといった化合物において、転位の可逆運動に由来する新しいタイプの擬弾性の発現を発見されました。その発現機構は、これらの化合物に応力を負荷すると、転位が規則相特有の逆位相境界(antiphase boundary, 以下APB)を引きずりながら運動しますが、その後、除荷すると、形成したAPBが消滅しようとして転位を後方に引き戻すことで、可逆変形となります。この機構により、安田先生らはこの現象を「APB擬弾性」と名付けておられ、相変態を伴わない特異な擬弾性機構として認知されています。安田先生は、さらに近年、Fe3Ga合金において、その規則度や荷重軸方位を制御すると、APB擬弾性以外にも、マルテンサイト変態や双晶変形に由来する擬弾性も発現することを見出しております。本講演では、こうしたD03型Fe基化合物の新規な擬弾性挙動について、その発現機構を中心に概説していただきました。また、擬弾性は動的な現象であるため、そのメカニズム解明には、電子顕微鏡などでのその場観察が大変有効です。そこで、安田先生らの研究グループでは、透過型電子顕微鏡その場観察に加え、SEM-EBSP、中性子回折を用いた新しいその場観察法も利用し、擬弾性の発現機構解明に取り組んでおられます。本講演では、こうした新規のその場観察法についても紹介して頂きました。出席者は17名で熱心な討議がなされました。講師の安田弘行先生、出席者の皆様に感謝いたします。
世話人:細田秀樹(先端材料部門・教授)