トップ > 最新情報 > 精研談話会-軽量高強度マグネシウム合金の新展開-を開催しました。(10月16日)
軽量高強度マグネシウム合金の新展開
密度1.74g/cm3と実用金属中で最軽量で,融点650℃と低く溶かしやすいマグネシウム(Mg)は、資源的にも豊富であり,自動車や飛行機に利用すると軽量化により省エネルギーとなり,プラスチックよりもリサイクルしやすいため,航空機,自動車,コンピュータ,医用機器などとして様々な分野にその利用が広がりつつあります。本談話会ではこれらマグネシウム合金に関し最先端の研究を行っている本学出身の3名の先生方に講師としてお越し頂き,変形機構・機械的性質・組織制御・プロセッシング・複合材料化,傾斜機能化などに関する最新の研究や今後の展開についてご講演を頂きました。
まず,北海道大学 三浦誠司先生より“Orientation Imaging Microscopyに基づくMg合金単結晶中の双晶形成過程の理解”と題したご講演を頂きました。三浦誠司先生は精研の旧職員でもあります。Mgの常温変形では底面すべりとともに変形双晶が重要です。双晶は破壊の起点であると共に,加工性改善のための結晶粒微細化や集合組織のランダム化につながることも期待されます。この点から,先生はMg単結晶での(10-12)type変形双晶の形成過程について,SEM-EBSD解析に基づいたOIM手法を用いた研究をなされており,その知見や多結晶体の変形挙動の考察についての最新の知見をお話し頂きました。
次に,電気通信大学 三浦博己先生より“大ひずみ加工によるマグネシウム合金結晶粒の超微細化と高強度化”と題したご講演を頂きました。Mg合金は各結晶粒の結晶方位によって再結晶挙動と微細挙動が大きく異なるため,高温単軸圧縮加工による組織の均一微細化は困難です。また,一定温度での強加工では,最終粒径が鍛造温度の関数となるため結晶粒の超微細化は困難です。そのため,そのため,先生は,大ひずみ加工による結晶粒超微細化のため,パス毎に降温する降温多軸鍛造(MDF)を施し、それを達成されています。ご講演では,AZ31MgとAZ61Mg合金にMDFを施した結果や,結晶粒超微細化と機械的特性との関係などについて詳細なお話し頂きました。
最後に,名古屋工業大学 渡辺義見先生より,“遠心力混合粉末によるマグネシウム基複合材料の開発”と題したご講演を頂きました。先生は,微細粒子が分散した複合材料の製造方法として,遠心力混合粉末法を提案しています。これは,まず,強化相粒子と母材金属粉末によって構成された混合粉末を金型内に配置します。この金型を回転し,その金型内部へ母材金属の溶湯を注湯します。遠心力による加圧のため、粒子間の隙間に母材金属が行き渡ります。同時に、注湯された母材金属の熱により母材金属粉末が溶融します。この状態で冷却を行えば,表面層に強化相粒子が分布した傾斜機能材料が得らます。ご講演では,マグネシウムの基礎から本技術をマグネシウム基複合材料の製造に応用した最新の研究まで多彩なお話しを頂きました。
出席者は45名と大変盛況で,精研および本学の教員や学生のみならず,学外の方も多数お越し下さり,活発な質疑応答がなされ,大変有意義な会でした。講師の先生方,ご出席の皆様,精研広報委員の皆様,および会場の準備などをしてくれた研究室学生の皆さんに厚く御礼申し上げます。
日時:平成21年10月16日 金曜日 15:10~17:10
場所:すずかけ台キャンパス大学会館二階 第一集会室
15:10 Orientation Imaging Microscopy に基づくMg合金単結晶中の双晶形成過程の理解
北海道大学 大学院工学研究科 材料科学専攻 三浦誠司
15:50 大ひずみ加工によるマグネシウム合金結晶粒の超微細化と高強度化
電気通信大学 電気通信学部 知能機械工学科 三浦博己
16:30 遠心力混合粉末によるマグネシウム基複合材料の開発
名古屋工業大学 大学院工学研究科 機能工学専攻 渡辺義見
17:10 終了
(世話人:細田秀樹)