トップ > 最新情報 > 精研談話会を開催しました。(2008年12月11日)
下記のとおり精研談話会を開催しました。
日 時:12月11日(木)14:30~17:00
場 所:R2棟6F 大会議室
講演者:渋谷 陽二 先生 (大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 教授)
タイトル:金属ガラスの2つのAbilities
講演者:垂水 竜一 先生 (大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 准教授)
タイトル:共鳴超音波スペクトロスコピー ~音色で探る固体力学~
<内容>
上記の日時にて,大阪大学機械工学専攻渋谷先生,垂水先生と二名の先生にご講演を頂きました。まず,垂水先生からは「共鳴超音波スペクトロスコピー ~音色で探る固体力学~」と題された音による材料評価のご講演でした。垂水先生は,本所肥後研究室ご出身で,本年4月より現職でいらっしゃいます。「百聞不如一見」(百聞は一見に如かず)の”一見”を”観察”として捉えるならば,対象の直接観察を重視したこのような物事の考え方は,材料科学の研究分野では広く受け入れられ,また浸透しています。ノイマンの原理によると、材料の示す巨視的な物性はその結晶構造の持つ点群対称性に支配されます。そのため、微視的な構造や組織の観察・解析が、材料科学の発展に不可欠な研究手段であることに議論の余地はありません。それでは、”一見”の比較として取り上げた”百聞”とは、ここでは何を指せば良いでしょうか?少し穿った見方をするならば、”百聞”を対象から発せられる音を聞き取ること、と捉えられないこともありません。それならば、”音色”、すなわち材料の中に発生する振動・波動を利用した計測から、一体どこまでその特性を聞き分けることができるのでしょうか,という問いかけからはじまり,測定原理や実際の水晶などの物性評価の実例や今後の展望まで,大変わかりやすくご講演を頂きました。
引き続き,渋谷先生から「金属ガラスの2つのAbilities」と題されたご講演を頂きました。平成15年度から19年度まで実施された科研特定領域研究「金属ガラスの材料科学」における分子動力学計算による原子配置と金属ガラスの弾塑性変形を結びつけた先生のご研究のまとめだそうです。特に,先生は「材料を使う側」の機械工学の立場から参画されたそうで,アモルファス金属の弾性特性と塑性変形について計算科学の手法により検討した成果をご説明頂きました。特に,冷却過程において生じる非周期性の20面体基本構造の生成とそのクラスター化そしてネットワークの形成について着目され,これらの構造の安定性と弾性特性の関係について調べられ,ヤング率や降伏点といった弾性特性が,20面体の充填率(自由体積と関連)によりほぼ決定されることや,アモルファス金属の変形過程に生じる欠陥はせん断帯の生成と進展に帰着され,塑性変形能はその欠陥の振る舞いに強く影響を受けること,さらに,引張り・圧縮における異方性等は,マクロには等方性でもミクロには不均質構造体であることに起因し,塑性変形能の向上には,その内部構造の発展挙動の理解と制御が不可欠であることをなど明らかにされ,非常に理論的でわかりやすく,かつ,楽しいご説明を頂きました。
合わせて二時間のご講演予定でしたが,大変活発な質疑がなされ,かなり予定時間を超過してしまいました。また,参加者も30名と大変盛会でした。講師の渋谷先生,垂水先生,および関係者の皆様に篤く御礼申し上げます。
文責:細田秀樹 (先端材料部門・准教授)