トップ > 最新情報 > 第3回精研P&Iフォーラム「若手研究技術者交流セミナーITシリーズ」が開催されました.(2006年6月8日)
精研とNECの共催による標記セミナーの最終回にあたる第3回講演会が開催され、約60名の参加の元、熱心な質疑応答、および講師を囲んでの懇談の場が持たれた。
日時:平成18年6月8日(木)15:00-19:00
場所:すずかけ台キャンパスすずかけ多目的ホール/ラウンジ
横田眞一精研所長・教授のご挨拶につづき、2件の講演が行われた。
[1] 講演-1:MRAM
----高速不揮発性RAM実現を目指して----
講師:田原修一:NEC基礎・環境研究所 研究統括マネジャー
モバイル機器の待ち受け時メモリ消費電力増大を契機に、メモリをオフしておいても情報を記憶しておけるために、ほとんど 瞬間的に機器をオンさせることができる不揮発性RAMへの要求が高まっている。現在の代表的な不揮発性メモリである FLASHメモリに比べて、高速でかつほぼ無限回数の書き換えが可能なMRAM(Magnetic RAM)について、動作原理、 MJT(Magnetic Tunnel Junction)の形成などのキープロセス、メモリセルの設計、ヨーク配線構造、最新の16Mbit集積メモリの特性、などについて詳しく解説された。
この新しいメモリの応用デモンストレーションとして、車に搭載しておき、衝突事故などのときその瞬間の前後2秒間を記録する、ドライビングレコーダが紹介された。これには、衝突により電源がオフになっても情報が残る不揮発性でかつ高速書き込みができる、MRAMの特徴が良く現れていた。モトローラやIBMに数年遅れで研究開発を開始し、東芝との共同研究Pjを経て、現在世界の最先端に立っている状況を、生き生きと語られた。講演後活発な質疑応答がなされた。
[2]講演-2:メディア情報処理技術
-------デジタル放送向けAV符号化・配信技術とその将来------
講師:原崎秀信:NECメディア情報研究所 研究統括マネジャー本学理工学研究科非常勤講師
放送のデジタル化が進んでいる。DVD, 放送、携帯にわたるこれまでの音声・画像(AV)デジタル符号化の標準化の流れについて詳しく解説された。標準化がなされると一気に世の中が変わること、企業にとっては標準化活動の中にいて技術的・ビジネス的な主導権を握ることが重要なことなどが述べられた。ITU-TとMPEGの二本立てで進んできた動画像符号化の標準化の現状、今後のデジタル放送の導入スケジュール、地上デジタル放送へ向け、HDTVを従来限界の18Mbpsよりも高効率14Mbpsで送ることができる高圧縮符号化技術などについて詳しく紹介された。これらの活用シーンとして、AV技術がいたるところで活躍する将来イメージのプロモーションビデオが紹介された。最後に、若手研究者に向け、“夢を持ち、世界で戦え!”との期待の言葉がかけられた。
[3] 懇談:上羽前精研所長・教授の乾杯に始まり、講師を囲んでさまざまな意見交換が活発に行われた。講演中のプロモーションビデオに現れていた手のひらサイズの日英・英日通訳器は、実際に懇談会の席で参加者に紹介され、手にとって試され、にぎやかな輪ができていた。
今回をもって、本ITシリーズは好評裡に終了しました。ご支援・ご協力をいただいた、上羽前精研所長、横田精研所長、P&Iフォーラム担当香川教授を始め、精研の教職員・学生の皆様に深く感謝します。なお、来年度、今回の経験を踏まえて、多少装いを新たにしたシリーズを開催する方向で検討を始めています。ご要望、ご意見など、お寄せいただければ幸いです。
本件に関する問い合わせ:精研光エレクトロニクス客員研究部門受け入れ教員
精研極微デバイス部門 教授 小林 功郎
kkobayashi@ms.pi.titech.ac.jp
下記は第2回の開催報告です。
第2回P&Iフォーラム「若手研究技術者交流セミナー ITシリーズ ‐‐‐羽ばたけ技術者、未来に向けて‐‐‐」
下記の内容で精研P&Iフォーラム; 若手研究技術者産学交流セミナーITシリーズの第2回を無事開催することができました。
精研とNECの共催による標記セミナーの第2回講演会が開催され、約80名の聴衆の参加の元、熱心な質疑応答、および講師を囲んでの懇談の場が持たれた。
日時:平成18年4月13日(木)15:00-19:00
場所:すずかけ台キャンパスすずかけ多目的ホール/ラウンジ
横田眞一精研所長・教授のご挨拶につづき、2件の講演が行われた。
[1] 講演-1:環境技術:エコプラスチックの開発と実用化
----世界最高レベルの環境調和性への挑戦と実現------
講師:位地正年:NEC基礎・環境研究所主席研究員、東工大総合理工学研究科非常勤講師
①プラスチックとは何か?に始まり、②難分解性、有害物の含有、石油資源の使用などプラスチックの抱える環境問題、③リサイクル、安全対策、石油代替化について議論を進め、④NECにおける環境調和型プラスチックの開発についてくわしく説明された。石油を用いず、トウモロコシを主原料とする高機能バイオプラスチックの開発の現状と課題について、ポリ乳酸を基礎とするさまざまな展開について語られた。まだコスト、耐久性などの課題が多いとはいえ、ケナフ添加、難燃性化、形状記憶プラスチックなど、将来へ向けた夢の多い話をしていただけた。終わりに、研究・開発に成功する要因として、①夢に挑戦、②常識にとらわれない、③わずかな兆しを逃すな、④議論と協働、⑤努力・粘り、をあげられ、若い研究者・学生への励ましをいただいた。
[2]講演-2:情報通信を支える化合物半導体光デバイス技術
------Telecomから光インターコネクションまで-------
講師:中村隆宏:NECシステムデバイス研究所部長、
精研光エレクトロニクス客員研究部門教授
講師がNEC入社以来取り組んできた光アクセス系用半導体レーザの開発の状況、あらたな発展としての10Gb/sイーサネット用、光インターコネクション用、さらには地球シミュレータの次のスーパーコンピュータ用の半導体レーザなどについて、MOCVD結晶成長技術、デバイス構造、信頼性試験結果などを交え、なまなましい研究開発・実用化の状況を説明された。特に、次の世代のスパコンでは、CPUに1000chの光モジュールを実装することになり、現状のデバイスでは、80cmx180cmと畳サイズになってしまうため、大幅な小型化が必要なこと、1chあたりの信号速度を上げるため、25Gb/s変調が可能な面発光レーザ(VCSEL)を開発したこと、スパコンなどでは使う数がひどく多くなるので素子の信頼性の確立が最大課題になりそうなことなどが述べられた。最後に“ものづくり”の重要性について触れられ、若手・学生へ向け世界に冠たる日本のものづくりの再発見、再構築への挑戦の熱いエールが贈られた。
[3] 懇談:上羽前精研所長・教授の乾杯に始まり、講師をかこんで、あるいは隣の研究室どうしでのさまざまな意見交換が活発に行われた。懇談の途中で、横田精研所長から、中村隆宏氏へ、精研光エレクトロニクス客員研究部門教授の辞令が交付された。
次回は、本ITシリーズの第3回(最終回)として、6月8日(木)15:00-から、今回と同じく、すずかけ多目的ホールでの講演(MRAM:Magnetic RAM,およびディジタル放送用符号化)
とその後の懇談を行う予定。
本件に関する問い合わせ:精研光エレクトロニクス客員研究部門受け入れ教員
精研極微デバイス部門 教授 小林 功郎
kkobayashi@ms.pi.titech.ac.jp
下記は第1回の開催報告です。
第1回P&Iフォーラム「若手研究技術者交流セミナー ITシリーズ ‐‐‐羽ばたけ技術者、未来に向けて‐‐‐」PDF
下記の内容で精研P&Iフォーラム; 若手研究技術者産学交流セミナーITシリーズの第1回を無事開催することができました。
東工大精密工学研究所とNEC中央研究所の共催で新たに開始された、産学交流セミナー ITシリーズの第1回が、2月23日(木)すずかけ台キャンパスのすずかけ多目的ホールで開催さた。冒頭、上羽貞行教授・精研所長(写真1)から、産学交流の新しい仕組みとして、精研が先頭になって試行、育ててゆきたいとの開会のあいさつ、國尾武光NEC執行役員中央研究所長から、IT分野の最先端の研究者技術者を派遣し、大学の教職員・学生との一歩踏み込んだ交流を実現したいとの共催者あいさつに続いて2件の講演が行なわれた。
1件目の講演は、”IT業界の動き-----R&Dからビジネスまで:ITの最先端動向!------”と題して、NEC研究企画部長の江村克己氏により、ユビキュタス社会へ向かうITの状況、それに向けたさまざまな課題追求への状況がわかりやすく紹介された。これまでもさまざまな壁を乗り越えてきたIT業界だが、さらに多くの壁が予見され、さまざまな工夫・努力によりそれらを克服し、大きな技術イノベーションを実現していかなければならないことを強調された(写真2)。
2件目の講演は、”スーパーコンピュータとその応用-----世界最高速を目指す熾烈な性能競争の現場から------" と題して、NECインターネットシステム研究所研究部長の妹尾義樹氏により、地球シミュレータの開発に携わったときの様子も含め、世界の高速コンピュータの状況や、その応用の展開について、激しい研究開発競争の一端が生き生きと語られた。数年前に開発した地球シミュレータの性能は、米国を震撼させ、米国の国家プロジェクト立ち上げにおおいに貢献したこと、地球規模での気象予測や、車の安全テストシミュレーションなどに活躍の場が広がっていることなど、興味深い話を聞くことができた。
講演後、場所を精研6階に移して、懇親会が行なわれた。精研、総理工の学生を中心に、今回のセミナーの講師お二人に加えて、次回(中村隆宏氏)、次々回(田原修一氏、原崎秀信氏)の3人の講師の方も参加され、講師をかこんで懇談の輪が広がった。
本ITシリーズは、次回:4月13日(木)、次々回:6月8日(木)に開催する予定。
(文責:小林功郎教授)
上羽貞行教授・精研所長
NEC研究企画部長 江村克己氏