トップ > 最新情報 > 精研談話会が開催されました.(2006年3月6日)
平成18年3月6日(月)13:30-15:30に精研談話会を開催致しました。
講演者の中野貴由先生は,大阪大学副学長馬越祐吉先生研究室を中心とした医工連携研究推進の中心としてご活躍されている先生です.本談話会では,生体硬組織(骨)についての材料学アプローチによる解析,結晶配向性の評価,それらを利用した新生体材料の設計などについて詳細なご講演を頂きました.特に結晶配向性と生体機能の関係などは斬新かつオリジナルの研究成果であり,現在大変注目を集めている内容です.参加人数は21名であり,当初予定より30分オーバーするほど活発な討議がなされました.講演者の中野先生、関係者の皆様に篤く御礼申し上げます。 (文責:細田秀樹)
世話教員:細田秀樹
日 時:2006年3月6日 13:30-15:00
場 所:精研R2棟6F大会議室
講演題目:正常・再生・疾患硬組織に対する材料工学的アプローチ
講演者 :中野貴由助教授
所 属:大阪大学大学院工学研究科マテリアル生産科学専攻
大阪大学臨床医工学融合研究教育センター(兼)
<講演内容>
硬組織疾患や骨再生に対する最近の医療技術の進歩とともに、その評価・解析法は、「骨量」から「骨質」へと変わりつつある。骨の主たる役割が、カルシウム代謝制御や造血とともに、自重支持や内臓保護といった構造部材としての働きであることから、力学機能を直接反映するような骨質評価法が重要となる。本来硬組織はナノレベルにまで緻密に制御された構造を持ち、硬組織機能はマクロな骨形状やアパタイト量のみならず、微細構造により支配されている。したがって、疾患硬組織や再生医工学的手法による再生硬組織の機能・組織診断のためには、従来から広く用いられている骨量・骨密度や骨形状の評価では不十分である。 本講演では、硬組織の骨質評価法の一つとして、我々の研究グループで進めている結晶学的アプローチについて紹介する1,2)。本手法は、硬組織の無機成分である、生体アパタイト・ナノ結晶子の配列に注目したものであり、従来のレントゲン等による骨量を評価する手法とは大きく異なる。アパタイトは、異方性の強い六方晶をベースとすることから、そのc軸配向性を微小領域X線回折法により解析するとともに、ナノインデンテーション法をはじめとする材料工学的アプローチにより、硬組織の組織と力学機能に対する理解を可能とする。アパタイトの配向性は、in vivo応力をはじめとする外的因子の作用に敏感であり、配向度合いを指標とすることで、硬組織の再生過程、機能の変化過程、硬組織疾患の形成過程、判定、創薬支援等、幅広く利用できるものと期待される。
写真:大阪大学中野貴由助教授によるご講演